京都大学附属図書館所蔵『兵範記』の調査・撮影

本書、平信範自筆古写本二十四巻・新写本一巻は、もと近衛家に伝来したが、江戸時代の延宝三年頃近衛基熈より、信範の末裔平松時量に贈られたもので、のち平松家より京都大学へ寄贈され、現在に至っている。
 古写本の料紙には、信範あての書状、あるいは信範自筆の案文・反故紙等が用いられており、平安末期の文書群として貴重な価値を有することは周知のとおりである。そして、その筆蹟から判断して、古写本は記主である信範自身が他の数人と共に浄書したものと認められる。また巻二は古写本を影写したものと考えられる。
 今回の調査では、紙背の状態に注意し、特に表裏の対応を明らかにすることを目的とした。
このため、まず一紙毎にその端を示す記号を付して表裏全文をマイクロフィルムに収めた。ついで重要と思われるもの二三一点(若干の本記の他、大半は紙背文書)については4×5版で、裏打の紙が厚く判読困難なもの一五点と花押三二点については赤外線フィルムで、それぞれ撮影した。(昭和五四年三月一二日〜一七日)。
その後、全文のCH焼付を携行し、表裏の対応関係を注記する作業を行なった(同年七月二三日〜二七日)。
各卷の紙数等を表示すると、左のごとくである。なお、内容欄は、一応の目安として、紙背文書の中から年記のあるものを中心に任意に示したにすぎない。
(岡田隆夫・石井正敏・吉田早苗・針生邦男)
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『東京大学史料編纂所報』第14号